私たちの言動の「最終決定権」を握っている潜在意識、「自信を持って人前で発表したい」「ジムに通う習慣をつけたい」などを「願望」ではなく「現実」にしたいなら、最終決定権を持っている潜在意識を変える必要があります。どうやったら変えることができるのか、誰でも実践できる方法と、催眠状態を活用した方法、そしてその違いや比較についてお伝えします。
このエピソードのポイント
- 潜在意識を変える鍵を握るのは、8〜9歳ぐらいにできるフィルター
- 潜在意識に新しい情報が落ちる3つの条件
- 誰でも実践できる、潜在意識に情報を落とす方法
- ヒプノセラピーで潜在意識に情報を落とす方法
- ヒプノセラピーとそれ以外のセラピーとの違い(セッション回数と成功率)
スクリプト
さて、前回は短期間でお悩みを解決するためになぜ催眠状態を活用するのか、つまりなぜヒプノが効果的なのか・・・というお話をしました。
日々の生活の中で、私たちの言動の最終決定権を持っているのは潜在意識、なので、「堂々と自信を持って人前で演奏したい」、「ストレス喰いをやめたい」、「週に2日はジムに通いたい」といくら思っていても、潜在意識が逆方向を向いていたら、私たちの言動も逆になるということ。その潜在意識の方向性を変えることができるのが催眠状態とお伝えしました。
潜在意識の方向性を変えるということは、すでにご自身の潜在意識にある紐付けを変えるということです。例えば「人前に立つ」イメージに恐怖や不安が紐づいていたら、「充実感、高揚感、エキサイトメント」などの紐付けに変える、「ストレス」イメージに「食べたら楽になる」という感覚や感情が紐づいているのであれば、「深呼吸をして、一歩距離を置いて客観的に状況を見ることができる自分、その時の穏やかな冷静な気持ち」などに変える、「ジム」のイメージに疲れる、つまんない、挫折感などが紐付いているのであれば、「達成感、エネルギーが湧く」感覚や感情に変える・・・ということ。
そして、ヒプノ、催眠状態ならダイレクトに潜在意識に情報、紐付けを落とすことができるとお話ししました。
では、具体的にどうやって潜在意識を変えるのか、新しい情報や紐付けを落とすの
か・・・ですが、前回お話しした顕在意識と潜在意識の氷山の構造を思い出してみてください。水面上、見えている部分にあたる顕在意識と、水面下の巨大な部分にあたる潜在意識。この巨大な潜在意識にそもそもどうやって特定の情報、紐付けが落ちるのか・・・その点、どう思いますか?
前回、8歳、9歳ぐらいまでは眠っている時を除いて常に催眠状態にある・・・とお伝えしましたよね。そもそも、「マジ?」って思われたかもしれません。常に催眠状態にあるってどういうこと?とも思われたかも。どういうことかというと・・・ズバリ、顕在意識が発達していないからとお伝えしました。つまり、水面上に見えている顕在意識は8歳、9歳ぐらいまでは存在しない。別の言い方をすると、子供たちは8歳、9歳ぐらいまでは「潜在意識剥き出し」で生活していることになります。なので、何でもかんでも潜在意識に落ちるわけです。
「子供たちはスポンジのように吸収する」とよく言いますよね?その所以は、潜在意識が剥き出しで、何でもかんでも潜在意識に落ちるからです。当然と言えば当然。全てが新しく、何から何まで新しく学ぶ時期ですから、どんどん潜在意識に落ちるわけです。
ですが、それは学ぶことや良いことだけではなく、辛いことや悪いこと、悲しいことも同じように潜在意識に落ちますので、子供はトラウマができやすいというのもそのためです。
ただ、逆にこの仕組みをきちんと理解していると、嫌な、辛い出来事が起きたとしても、その紐付けを変えるのも比較的楽です。ヒプノセラピーでも、子供の方が効果が出るのは早いです。
8歳、9歳ぐらいになると、もちろん個人差がありますが、考える力がついてきます。感情的に好き嫌いを判断するのではなく、理由が伴った好き嫌いだったり、物事を判断したりする力です。徐々に顕在意識が発達し始めると同時に、顕在意識と潜在意識の間にフィルターが生まれます。
このフィルターが、「何を潜在意識に落とすか、落とさないか」を判断するわけです。一日中判断しているわけではありません・・・一日中判断してたら過労死してしまいます・・・というのは冗談ですが、シフト作業などに携わっているはちょっと異なりますが、日中はフィルターは閉じています。例外もありますがそれはまた後ほど。
フィルターが働くのは夜、寝ている間です。1日を通して経験したこと、これは体内で起きること、湧き上がる感情とか、痛みとか、思考とかから、外から入ってきた情報など諸々全てを寝ている間に整理していきます。その時に「重要」「覚えておく必要があること」と判断された内容はフィルターを通って潜在意識に落ちていきます。また、新しい情報と、潜在意識に既にある情報を比較して、もはや不要な情報を排出するということも行われます。これがいわゆる、潜在意識の書き換えですね。
なので、潜在意識にすでに存在する内容を、ご自身に都合の良いように変えたいのであれば、新しい紐付け、ご自身が願っている内容をなんとかしてこのフィルターを通せばいいということになります。また、古い紐付けを排出させる必要もありますが、まずはこのフィルターを通すということ。その方法には何通りかあります。その一つが反復、繰り返しです。
何度も繰り返すことは「重要」と判断されます。練習することでなんでも上手になって、考えなくてもできるようになるのはこの仕組みです。自転車に乗る、蝶結びをする、車の運転など、最初は考えながらやっていたことが、何十回も何百回も繰り返すことでいつの間にか自然にできるようになりますよね。歯を磨くなど頻繁に行う行為も、いちいち考えながらやっていたらすごくエネルギーを使いますから、いわゆる自動化、省エネのためにも潜在意識にパターンが入ることで自然といつもと同じ順番で磨けるわけです。
さてここで、私のステージ恐怖症、あがり症の例を考えてみると、じゃあ、ステージに上がり続ければいいじゃんと思われますか?残念ながら、すでに潜在意識に「ソロ演奏は危険、リスク」というパターンがある場合、そのパターンが繰り返されてさらに補強されてしまうので、あがり症が余計にひどくなる可能性が高まります。初回のエピソードで無理強いすると悪化する可能性が高くなるとお伝えしたのはこのためです。
ですが、実際にステージに無理やり上がるのではなく、ステージに上がって、堂々と自信を持って演奏している自分の姿」を何度も思い浮かべたり想像することで、つまり反復することで徐々に潜在意識のパターンを変えることは可能です。これがスポーツの領域でよく使われる「イメージ療法」です。パーフェクトにゴールしている自分をイメージするというアレですね。
これは、催眠状態を使わずに潜在意識にアプローチをする一つの方法と言えます。
また、夜にアファメーションを唱える、書くと良いという話を聞かれたことがあるかもしれませんが、これも似たような効果があります。なぜ夜なのかというのも、後ほどと説明しますが、眠る前にアファメーションをする、特に唱えるよりも「書く」と効果的です。
実は「書く」という行為は直接潜在意識につながっているんです。へぇ?と思われましたか?筆跡診断ってありますよね。書かれた文字から性格やその時の感情を判断することができるという筆跡診断。あれは、潜在意識の状態が筆跡に現れるからこそできることなんです。逆に、筆跡診断を勉強された方なら、筆跡を変えることで性格を変えることもできるということをご存知だと思います。書くという行為はそれぐらい潜在意識に直結しているので、催眠状態に入る直前、つまり眠る前にアファメーションを書くと潜在意識に落ちやすくなります。
これらは、誰でも手軽に、しかもお金もかからずに潜在意識にアプローチできるツールと言えます。ただ、時間がかかるんですね。イメージする時間やアファメーションを書く時間はもちろん、たいしてかかりませんが、潜在意識に実際に落ちるまでの時間が結構かかります・・・
スポーツの場合は、イメージをした後に練習をすると思うので、イメージして実践、イメージして実践を繰り返すことで潜在意識に落ちやすくなるのかもしれません。特にスポーツの領域でイメージ療法がよく使われる理由はそこにあるのかなぁと思います。
反復、繰り返しの他に、潜在意識に情報が落ちるパターンとして、衝撃やショックがあります。その最たるものがトラウマですね。衝撃的なことが起きると、それは「重要なリスク事項」として潜在意識にあっという間に落ちます。
先ほど、日中はフィルターは閉じてるとお伝えしましたが、事故とか衝撃的なことが起きると、顕在意識が機能しなくなります。いわゆるショック状態ですね。これは一瞬の場合もありますし、ショック状態が続いてしばらく顕在意識が機能しない場合もあります。その時、フィルターが開いて、その時のイメージや感じた感覚や感情が紐付き、一気に潜在意識に落ちます。その最たるものがトラウマですが、大きなトラウマとは限りません。要はご自身にとって衝撃的なこと、ショックなこと、一気に交感神経に切り替わって逃走闘争本能、つまり戦うか逃げるかみたいな状況であれば、潜在意識に落ちる可能性があります。
これ、必ずしもマイナスなことだけではありません。私は20年ほどフリーランスの会議通訳として仕事をしてきました。まだ、駆け出しの頃は経験も少なく、失敗もしましたが、クライアントの前で出てこなかった専門用語、または知らなかった専門用語は、その後2度と忘れない傾向があります。駆け出しの頃は常にすごく緊張していましたし、言葉が出てこなかったり、専門用語であれば当然知らない用語も出てきたりはするんですが、やはり「恥ずかしい」という気持ちや、「クライアントの前で2度と同じ失敗はしたくない」という気持ちもありましたから、おそらく一発で潜在意識に落ちたんでしょうね。
ということで、潜在意識に情報を落とすためには反復、繰り返すか、または衝撃やショックでフィルターを通すということになりますね。ただ、この衝撃やショックによる方法は、自分自身で潜在意識にアプローチする際にはなかなか実践しにくいので、ご自身で、催眠状態を活用せずに実践するのであれば、反復、つまりイメージ療法とかアファメーションになると思います。
フィルターを通すもう一つの方法が催眠療法、ヒプノセラピーです。というのも、催眠状態に入ると顕在意識がちょっとお休み状態になり、お休み状態にもレベルがあるんですが、そしてフィルターが開く、情報を通しやすくなります。
ここでちょっと、アファメーションの話に戻りますが、先ほど、夜、書くと良いですよとお伝えしました。実際には、この顕在意識がやすみ始めて、フィルターが開く催眠状態に入る前、つまり眠る前にアファメーションを書くと、潜在意識に落ちやすくなります。これは、毎晩行うことで、反復でもありますし、また自然な催眠状態に入る直前のタイミングでもあるので、とても良いと思います。イメージ療法もこの時一緒に行うというのも良いですね。
ですが、やはり最も効果的なのは、催眠状態に入る前ではなく、催眠状態で情報を落とすことになりますので、セラピストの誘導で催眠状態に入り、ご自身が変わりたい、変えたいと思っている内容をダイレクトに潜在意識に落としていくというのが、最も効果も高く、効率的と言えます。
ただ、だからと言って、反復、繰り返しをを完全に省けるわけではありません。潜在意識に落とした新しい情報を補強する必要があるからです。が、この点については、また次回、お話ししたいと思います。
最後に、じゃあ、ヒプノの場合、他の方法と比べてどれだけ早く、効果的に変わることができるのかというお話をちょっとしたいと思います。これは私のウェブサイトにも載せている情報ですが、アメリカン・ヘルスという雑誌に3種類のセラピーの成功率に関する比較研究が掲載されたことがあります。キャプションにリンクを載せておきますので、ご興味があればチェックしてくださいね。
その研究結果は精神分析の成功率は600回のセッションで38%、行動療法の成功率は22回のセッションで72%、つまり行動療法の場合は、精神分析に比べて約30分の1のセッション数で、約2倍の成功率ということになりますよね。そして、ヒプノセラピーの成功率は6回のセッションで93%、ということはその行動療法に比べて、約3分の1のセッション数で1.3倍の成功率という計算になります。
ただ、これは単純計算ですし、同じお悩みや問題に関する成功率の比較研究ではありませんので、いわゆる同一条件での比較ではありませんが、それにしても、ヒプノセラピーの成功率が圧倒的にに高いということがお分かりいただけるのではないでしょうか?
これは、精神分析も行動療法も基本的には顕在意識レベルで行れるからだと思います。実は、催眠状態というのは自然な生理現象ですから、心理カウンセラーが意図することなく、条件が揃ってしまってクライアントまたは患者さんが催眠状態に入ってしまうことも結構あるようです。これは、マインドボディ心理学を学んでいる際、教授陣がデモをしてくださったときに、よく感じたことです。つまり、あ、これは催眠状態に入るな・・・って。でも、催眠療法を勉強したカウンセラーでない限り、それはわかりません。ま、なので知らず知らずにヒプノを使っているカウンセラーも結構いるのではないかと思いますが、それでも基本的には顕在意識レベルで行われる療法になりますので、何度も反復しないと潜在意識に落ちません。潜在意識に落ちなければ、言動は変わりません。
ですが、ヒプノセラピーは最初から潜在意識に情報を落とすことができますので、反復の部分があっという的に少なくてすみます。
次回は、この補強、実践の部分についてお話しましょう。
ご自身は今、どんなお悩み、ジレンマを抱えていらっしゃいますか?もし、「これは潜在意識の問題なの?」違うの?と思われたら、コメントをいただければ今後のエピソードでお答えしますね。